CMS Conference 2008

11/29/2008

11月26日に開催された「CMSカンファレンス」(日本ウェブ協会主催)に行って来た。
CMS Conference 2008:経営戦略実現に向けてCMS導入成功例から学ぶ戦略デザイン

カンファレンスは、10:30〜20:30の10時間というかなりの長丁場。

午前中の基調講演、ワーキンググループ研究発表と最後のパネルディスカッション以外は、2ラインのパラレルセッション(CMSベンダーによるユーザー事例系/制作側によるマーケ&テクニカルセッション)だったので、私はマーケ&テクニカルセッションの方を取りました。

以下、受講したセッションのメモ。

【10:30〜基調講演】
タイトル:急速に変化するビジネスとWebを支える情報基盤
by キノトロープスリーイント代表取締役 門別さん

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●Webサイトの本質は変わっていない。利用するユーザーが変わった。
(Webサイトの本質=マーケティング、サポート、ブランド育成)
●「WebのためのWeb戦略」から「企業戦略の1つとしてのWeb戦略」へ変わってきている。
●目指すべきサイト構造とは、ユーザーが問題解決できるよう「マルチエントランス構造」(LPO的)であること。
●CMSとは情報基盤である。(コンテンツ生成や情報管理だけではない)
つまり
⇒ユーザー視点のコンテンツ設計:誰がコンテンツを持っているか
⇒管理視点の権限設計:誰がコンテンツを操作するか
を考え、表のユーザー(利用者)と裏のユーザー(運用者)の両方が快適に使ってもらえるように作ることが大事。


【11:30〜ワーキンググループ研究発表】
タイトル:サイトの目的によって適切なCMSを選ぼう(CMS導入AtoZ)
by 日本ウェブ協会CMSワーキンググループ
・グローバルデザイン代表 白旗さん
・アンカーテクノロジー 神森さん
・ディーアイエスアートワークス 佐藤さん
・? 鮫島さん

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●「CMS」という一言で一括りにされがちだが、自動車と同じように、目的、用途に応じて選ぼう。
●大雑把にサイト規模にあわせたCMSプロジェクトを3つに分類し、必要な機能を挙げると次の通り

C: オープンソースを利用した300万円以下のプロジェクト
(Webマスターが1人で会社案内の延長程度の、コンテンツ生成を中心としたコーポレートサイトの場合)
■機能
 ・テンプレ
 ・WYSIWYGエディタ
 ・インデックスページの自動生成
 ・タイマー
 ・公開/非公開コントロール
 ・ファイル(アップ)管理(FTP不要)

B: 商用エンジンで500-1000万円程度のプロジェクト
(英語サイトも持っているが、いわゆる普通のコーポレートサイトの場合)
■機能
 ・上記Cで挙げた機能
 ・ユーザー管理
 ・ワークフロー
 ・権限管理
 ・バージョン管理
 ・マルチランゲージ
 ・アクセス解析
 ・リポジトリ
 ・検証環境
 ・コンテンツ配信
 (CMSではないが、社内向けガイドラインも必要)

A: 高機能エンジンで2000万円以上のプロジェクト
(グローバル企業で多数のサイト管理も行っているような、コーポレートサイトの場合)
■機能
 ・上記C、Bで挙げた機能
 ・セキュリティ
 ・ガバナンス
 ・マルチサイト管理
 ・ブランディング
 ・整合を取りながらの同期配信
 ・ユーザーに最適なコンテンツを出せる(ABテストとか)
 (共通の情報は一元管理しながら複数サーバに配信でき、またサイトを育てる必要がある)


【13:30〜】
タイトル:企業サイトの存在意義 費用対効果はどこに求めるべきか?
by オグルヴィ・ワン株式会社 デジタル・リード 川井さん

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●Digital Influence、WOM(クチコミ)とか、ますますWebが重要に。
●Value Point:サイトアクセス数やユニークビジター数に変わる指標
 ⇒そのページの価値を考える(view数だけでなくコンテンツに重み付け)
 ⇒1つのトラフィックに対する価値
 ⇒その合計がTotal Value Point
 例:トップページ、商品ページ、使い方ページの3ページで構成されるWebサイトの場合、サイトの目的として、使い方を知ってもらうことを重視しているのであれば、トップページ(2点)、商品ページ(5点)、使い方ページ(10点)というような重み付けをする
●Performance Marketing:全体の効率化を考えることが重要


【14:40~】
タイトル:コーポレートサイトにおけるCMS導入のすべてを教えます
by 楽天 編成部 清水さん

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●Webコンテンツ管理とは
 ・価値の低くなったコンテンツを特定できなくてはいけない
 ・サーバ上に不要なファイルが1つとしてあってはいけない
 ・画像がどこで使われているか特定されなくてはいけない
 ⇒だから難しい
●コンテンツ管理できていないリスクの事例
 ⇒過去の記事が誤って掲載され、それが検索ロボットにクロールされ、別のサイトでアグリゲーションされてしまった。ネガティブな内容の記事であり、なおかつ記事に日付も入っていないため、最新情報として誤解されて、株価が大暴落。
●こういったリスクを避けて、ちゃんとコンテンツ管理するための7つの方法
1. 公開コンテンツ以外も管理する
 ⇒期限を設定し、コンテンツの価値を明確にする
2. 素材をアセット化する
 ⇒メディアに依存しない汎用素材を作って一元管理し、どこで使われているかも管理する
3. コンテンツを部品化する
 ⇒タイトル、リード、本文・・・など。(部品化には時間がかかる。大体2年)
4. 他のシステムと連携させる
 ⇒保管レポジトリと変換/配信機能を分離
5. コンテンツの品質を高める仕組み作り
 ⇒WYSIWYGエディタはボタンをカスタマイズし、bタグがstrongタグと扱われるようにしたり、CSS対応にしたりする。
6. コンテンツ管理を分離する
 ⇒プロセスを固めてから管理を引き継ぐ。社内サポート体制を確立する(CMSヘルプデスクとか)。
7. 貯めるべきはコンテンツでありシステムではない
 ⇒変更に強いCMSを選び、乗り換えを想定しておく。サイトごとに最適なCMSを入れ、無理に一本化しない
●CMSは積極的なメディア展開のための先行投資であり、コスト削減ではない。

【16:00~】
タイトル:アクセシビリティは必須!公共サイトにおけるCMS導入のすべて
byグローバルデザイン代表 白旗さん

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●CMS導入における自治体サイトと民間サイトの前提条件の違い
 ・アクセシビリティ対応の優先順位が高い
 ・ページ作成者が極端に多い。また、その1/3が毎年変わる。
 ・担当者のスキルがバラバラ
 ・管理する対象ページが多い(町村で800ページ以上、市区で3000-8000ページ、政令指定都市で20,000ページ、中央省庁だと50,000ページ以上)
 ・数年に一度大規模な組織変更がある
●自治体サイト特有の要件
 ・アクセシビリティチェック機能
 ・分かりやすいUI(ワープロ的)
 ・Office系ソフトからのデータ取り込みが可能
 ・ページや組織が肥大化しても影響を受けないライセンス体系
 ・類似サイトでの導入実績
●CMSを導入するだけでアクセシビリティが実現できるわけではない
 ⇒例:国税庁のサイトはCMSが入っていないがアクセシビリティ評価は好成績)
●いかにWebを生かせるか、にまで及んでコンサルできる会社を実装会社として選定する(同じCMSを入れても実装方法次第で評価が大きく分かれる)。
 ⇒例:(ブログに書いたらまずそうなので・・・)

【17:10~】
タイトル:CMS導入リーディングカンパニーが語る「大規模CMSサイト成功の秘訣」
byロフトワーク代表 諏訪さん

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●プロジェクトマネジメントが大事
●CGMを作る時は「POST」メソッドで。
 P・・・People
 O・・・Object
 S・・・Strategy
 T・・・Technology


【18:30~ パネルディスカッション】
タイトル:本音炸裂!CMSここだけの話
byソシオメディア篠原さん、門別さん、川井さん、白旗さん、清水さん、諏訪さん

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Q. CMSをどう捉えるか
⇒CMSは引っ越しに似てる。物件を決めるだけじゃダメで、内装決めるとか荷物運ぶとか、きれいに維持するとかが大事。(門別)
⇒ツールじゃなく目的が大事だ(川井)
⇒CMSはほとんどの企業にとって初体験。体験したことがないものを想像だけで要件定義するのは無理なので、クライアント側に完璧な要件定義を求めることはできない。受注側の初期段階のフォローがとても大事(清水)

Q. CMS選定の時、ベンダーのデモだけではだまされたり、機能の○×表だけでは過不足だったり。結局どうやって選んだらよいか?
⇒結局はCMSの目的。○×やデモがダメな裏側をどう読み取るかが大事。(白旗)

Q. CMS導入プロジェクトの価格感は?
⇒大雑把だが、ページ数×10,000円+ライセンス代という印象がある(諏訪)
⇒ライセンス代×3〜4倍といったところではないか(白旗)

Q. CMS導入プロジェクトの秘訣は?
⇒できないことはできないって、はっきり言う(門別)
⇒変更に柔軟に対応できるよう、ロンチ後のことも考えた、予算や体制、スケジュールの確保をしておく(清水)
⇒目的に対し、信頼できる、またプロジェクトマネジメントができるパートナーを見つける(諏訪)

投稿者 nao 時刻: 17:28 0 コメント